田淵行男記念館 秋の企画展
●田淵行男写真展 秋色山行(あきいろさんこう)
2024年9月3日(火)~2025年1月19日(日)
田淵行男山岳写真の撮影の旬は、残雪の合間に生命の息吹が甦る春と、モノクローム撮影に適した強い日射しの夏なのであろう。それに比べれば秋の写真は、迫る冬の足音を聞きつつ山の季節の終焉をかみしめるような情緒的なものが多い。秋口の山をとらえようとすれば紅葉を思い描くが、田淵の場合は紅葉のある山肌や秋空との対比を楽しんだり、さらに言えば冬支度に入る動植物の変化自体に興味が行っているようである。博物学者らしい視点である。秋の田淵は寄り道の山行である。落ちた葉や木の実を眺め、手に取り、乾いた空気に生える秋色を愛で、遅々として進まぬ足取りですすむ田淵のうしろを展示で追いたい。
●澤井俊彦写真展「熊の記憶」
2024年9月10日(火)~12月1日(日)
田淵行男に続く自然科学系の写真家を発掘することを目的に始まった「田淵行男賞」、第5回の最高賞を受賞した澤井さんの作品展です。田淵はモノクロからカラーへと時代が変わる中、山岳写真を主としながらも「高山蝶」といった生態のカラー写真にも活路を見出していました。撮影の自由度がモノクロよりも勝っていたからです。同じく、フィルムからデジタルに変わる中で澤井さんは被写体として「ツキノワグマ」に出会います。デジタルの利点を生かしつつも、フィルムで培った綿密な画面構成や、気の遠くなるような時間を費やして切り取られた現場感の漂う作品は、田淵に続く気概を感じさせます。澤井さんの受賞後の軌跡をたどる新作作品展と、受賞作品の一部を展示します。
澤井俊彦(さわいとしひこ)プロフィール
1960年東京生まれ。1980年北アルプス地域を舞台にコダクロームフィルムでの風景撮影をはじめる。1991年頃より週刊誌や月刊誌で連載企画記事の写真を担当する。2000年頃より撮影のテーマを3つの柱「季の肖像」「森の肖像」「山の肖像」として活動する。2007年デジタルカメラに移行し、新たなテーマ「野生」のもとツキノワグマの撮影を始める。2016年第5回田淵行男賞写真作品公募にて最高賞である「田淵行男賞」を受賞する。